王子様の寵愛は突然に―地味っ子眼鏡への求愛のしかた―【コミカライズ原作】
やがて、ひとしきり口内で暴れていた舌は、そっと引き抜かれて彼の口の中へと戻ってゆき。
「どこにもいくわけないでしょ」
力の抜けた身体を持ち上げるように、ぎゅうっと抱きしめた永斗さんはつぶやく。
それは、どことなく呆れた口調で、
荒い呼吸を整えた私は「え⋯⋯?」と揺れる金色の睫毛を見上げる。
「来美、勘違いしてる」
「かん、ちがい?」
少しだけ汗ばんた私のこめかみに、濡れた唇がそっと触れた。
さっきまでとは違った静かなキスにきゅんと、心が震える。
どういうこと?
白いシャツに身を寄せ、下から覗き込んでいると
「――けど、泣きながら求められのは⋯⋯嬉しかった」
私の目尻に残った涙をペロッと舐めとった永斗さんは、はにかむように笑ったあと、
再び息が止まるほどキツく抱きしめてくれたのだった。
どどど、どういうこと⋯⋯?