王子様の寵愛は突然に―地味っ子眼鏡への求愛のしかた―【コミカライズ原作】

ほどなくして、再び香ばしいコーヒーの香りが広がっていた。

島田さんが切り分けてくれた、本橋屋の芋羊羹に手をつけていると、会長が静かに口を開く。


「実は、君のプレゼンを目にした日に『真島さんは永斗の恋人』であると島田に教えられたんだ」

「⋯⋯え?」


会長はチラリと彼に視線を送る。

思わぬ告白に驚いた私も、テーブルの隅でナイフを拭いていたブラックスーツの長身を見上げた。


島田さんが⋯⋯?

なぜわざわざ?


そんなことをする理由が私には見つからず、クエスチョンマークを大量に浮かべていると

彼はこちらを見もせずに答える。


「あんな状況になれば、言わないわけにはいきません。真島さんは動揺して、私に大荷物を押し付けて帰宅してしまったので」


ゔっ⋯⋯縁談を耳にした日のことか。

永斗さんに返すファイルを無理矢理押し付けたんだった。

< 462 / 489 >

この作品をシェア

pagetop