王子様の寵愛は突然に―地味っ子眼鏡への求愛のしかた―【コミカライズ原作】
「ふふっ。やっと、出てきた」
「⋯⋯そりゃ出るしかないですよ」
サダコのようにのっそりとシーツから顔を出した私を見て、永斗さんは声を上げて笑った。
乱れた髪を手櫛で梳かし、ズレていた眼鏡をそっと引き抜くと、それからサイドボードへ折りたたんで置いてくれた。
「出てきてもらえなかったら、島田を恨もうとしていたところだよ」
「そんな言い方には聞こえませんでしたけど⋯⋯」
つい恨めしそうな声を上げると、永斗さんはどこか楽しそうに横たえていた身体を起こし、私の頭の上に腕を突くと、流れるように顔を寄せてきた。
ふわっと瞼に唇が押し当てられる。
「ごめんね」
そう囁いて、反対側の瞼にも唇を押し当てて
そのまま眉間、鼻、頬へと続けた。
くすぐったい⋯⋯。
いじわるしたあとは、こうしていつもご機嫌取り。
どこまでも甘い永斗さん。
最後にやっと唇同士が触れ合って、
もっと、もっと
夢中になって彼の唇を追っていたら
離れていく瞬間、あっ⋯⋯と声を上げてしまいそうになるくらい寂しくて
気づいたら紺色のパジャマの胸元を掴んでいた。