クールな社長の不埒な娶とり宣言~夫婦の契りを交わしたい~
彼はあらためてデスクに向かって、並んでいるソフトウェアの実用書を手に取った。
紫織は何度も何度もその本を見ているのだろう。どれもこれもめくり皺で厚くなり、付箋だらけだ。
何を思うのか、彼はそれらを一冊ずつ手に取って繁々と見つめ、本を元の場所に戻すとあらためて室井に聞いた。
「ところで、どうですか? ここに来て不便なことはありませんか?」
「私は何ひとつありませんよ。全てが快適です」
「私はというと、藤村さんにはあるんでしょうか?」
「え? ええまぁ。彼女はね、制服があるともっとよかったって言っていましたね」
「制服?」
「はい。男はスーツがありますけどね。毎日のことだから女性は大変なんでしょう」
なるほど。と、彼は深く頷いた。
じゃあとその場を離れていく彼を見つめて室井はため息をつく。
――いい男なんだけどなぁ。
紫織は何が気に入らないんだ?