クールな社長の不埒な娶とり宣言~夫婦の契りを交わしたい~
――あの頃は純粋だったのに。
胸に燻ぶる黒い影は嫉妬なのかなんなのか、その影が、純粋だった輝きを消した。
くすんで汚くて、何も映すことはできない醜い心の持ち主になってしまった。
『ごめんな。紫織。シルバーしか買えなかった』
『ううん、いいのよ。うれしい! 本当にありがとう、宗一郎』
『いつか必ず、同じ銀色でもプラチナのリングを買ってあげるからな』
『いいの、いいのよ、これで。私一生大切にする』
輝きのないリングをそのまま指にはめてみた。
――遠いね。宗一郎。
あの頃にはもう、戻れないんだね。
私、どうしたらいい?
宗一郎はがんばって成功したのに、私、祝福の言葉すら言ってあげられない。
幸せになってほしいのに、でも、素直に喜べないの。
どうしたらいいの?
紫織の瞳からまたハラハラと涙が零れ落ちた。
――『SSg』を辞めよう。
誰のためでもなく、自分のために。
そして、大切な想い出のために。