クールな社長の不埒な娶とり宣言~夫婦の契りを交わしたい~
様々な事が紫織の心を駆け巡り、涙はいつまでたっても止まらなかった。
日付が変わる頃に森田社長を見送った後。ぐすぐすと泣く紫織を見かねたのだろう。
「久しぶりに二人で飲むか?」と、室井は紫織を誘った。
「――はい」
ふたりが入ったのは、すぐ近くにあった小さなバー。
カウンターといくつかのテーブル席があるだけの店にはジャズが流れ、週末の疲れをいやす客が静かにグラスを傾けている。
紫織と室井は小さな丸いテーブルを挟んで腰を下ろした。
少し身を乗り出すようにして紫織を見つめた室井は、声を落として囁いた。
「紫織。お前、鏡原社長と何かあるのか?」
「え?」
「この前、エレベーターで何か様子が変だったとかなんとか、総務の陽子さんが心配していたぞ」
――ぁ。