クールな社長の不埒な娶とり宣言~夫婦の契りを交わしたい~
「昔ね、すごく好きな子がいたんです」
そう言ってグラスに視線を落とした。
「幸せで大好きで、彼女との未来しか考えていなかった……。若かったんですよ」
「何言っているんですか、今だって十分若いでしょうに」
「もう何年も前のことです。恋愛はそれきりですね、今は仕事が忙しくてそれどころじゃありませんし」
そのまま唇を閉じてしまった彼を促すように、室井は重ねて聞いた。
「その女の子とは、その後、どうしたんですか?」
「別れてしまいました。今でも時々考えるんです。あの時どうしていたらよかったんだろうってね」
「それで。――答えは出たんですか?」
「いえ……。今はただ、自分の不甲斐なさに憤りながら、彼女の幸せを願うだけです」