クールな社長の不埒な娶とり宣言~夫婦の契りを交わしたい~
夏場にチョコレートなんて、溶けてしまうじゃないか。どうして断らないんだろう? 宗一郎のやつ。とブツブツ文句を言いながら、結局紫織はお昼休みにチョコレートを買いに出かけた。
社長室にも副社長室にもミニ冷蔵庫があるらしく。贅沢しちゃってと、そんなことまで腹立たしい。
――貴重なお昼休みなのに。もぉ。
汗をかいてしまうし、陽に焼けるし真夏の昼間なんて外を歩いていいことはない。だからお弁当を欠かさないと言うのに面倒臭いことこの上ない。
よりによって宗一郎の誕生祝いのためだなんて。もう。絶対に関わり合いたくないイベントではないか。
とはいえ、これで最後だ。
――仕方ない。
エレベーターで失礼な態度をとったことを考えれば、チョコレートを贈るくらい安いものかもしれない……。
落ち着いて考えればさすがにあれは酷い。
『気持ち悪い』とまで言ってしまった。
暴言がチョコレートひと箱で帳消しにはならないだろうし、渡したところでゴミ箱に捨てられるかもしれないが、まぁ、それも仕方がないだろう。
正直どうでもよかった。
退職届を課長に託した時点で、心に踏ん切りはついたのだから。