クールな社長の不埒な娶とり宣言～夫婦の契りを交わしたい～

『次の職場が決まったらここを辞めます。
　なるべく急ぎますので、それまでは置かせてください。
　よろしくお願いします。　　藤村』

　そんなふうに紫織の手書きの文字が並んでいた。

　丁寧に書かれた文字は、ひどく懐かしい形であるのに、どこまでも突き放すような、他人行儀な字だった。
　そのカードがバースディカードであることもまた、全てが冷えた事務的なものであることを表している。

　目をつぶりゴクリと喉をならし、また額に手をあてた宗一郎は、気を取り直したように中のチョコレートを取り出した。

　それはラムレーズン入りのチョコレートだった。

　そして、それは――。

『うわー、レーズンが入ってる』
『え、美味しいのに』

　紫織が好きで、宗一郎こと鏡原社長が唯一苦手なラムレーズンのチョコレートだったのである。