クールな社長の不埒な娶とり宣言~夫婦の契りを交わしたい~
 宗一郎がキャバクラに行くということには嫌悪感でうんざりしたというのに、室井が常連だと知っても嫌な感じをうけることはない。それはどうして?
 紫織はそのことに気づいたが、考えないことにした。

「実家が田舎で小さなレストランやっていてね、お父さんは料理が上手なんですけど、ちょっと病気しちゃって。ちょっと大変だったんです。なんとか力になりたくて。でも私この通り頭が悪いから、キャバ嬢しか思い浮かばなくって」

「光琉、お前は、勉強はできないかもしれないが、バカじゃないぞ」

「うふふ、ありがとうございます。私ね、これでもそのお店でNo1とれたことがあったんですよ。喧嘩して辞めちゃったけど」

「ナンバーワン? すごいじゃない光琉ちゃん」

「ありがとうございまーす。でも、お得意様のお客さんに頭からお酒かけちゃって、すっごいスケベ親父でね。頭に来ちゃって。どっちにしてもいつまでも続けられる仕事じゃないでしょ? 『あなたは昼間の光のほうが似合うわ』って言ってくれた憧れの人もいて。それに、いくらお金が貯まっても、そういうお金じゃお父さんは嫌がると思うし。それでね、鏡原社長が声をかけてくれたから本当にうれしかったんです。社長はあの通り真面目な人だから信用できるとふんで『私、コーヒーは美味しく入れられますから』ってね」

「――社長て、真面目なの?」

「あはは、やだぁ紫織さん、社長は超がつくほど、真面目ですよぉ。だからあんなプロにひっかかったりしたんじゃないですかぁ」

 室井が口を揃えて言う。
「だよなぁ、紫織は全然信じないんだよ。社長が真面目だってこと」
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