クールな社長の不埒な娶とり宣言~夫婦の契りを交わしたい~
それには答えず紫織は先を促した。
「それで、鏡原社長は、光琉ちゃんのそういう事情を知っていて誘ったってこと?」
「はい。そうみたいです。なんか私が、お金がほしい理由を誰かに聞いて知っていたみたいで。いい人ですよ? 社長」
「……そうなの」
光琉が知っているかどうかはわからないが、宗一郎の母は彼を身籠るまで銀座のクラブで働いていたという。そんな彼が彼女に対して偏見を持つことはないだろうし、むしろ応援したいと思うことは当然かもしれない。
そんなことを紫織は思った。
するとふいに、室井が言った。
「光琉、お父さんは? その後どうなんだ?」
「お蔭さまで、もう随分良くなってぇ」
――あ。
室井の質問を聞いた紫織は、ズンと胸を打たれた。
彼女の打ち明け話を聞けば、普通なら室井のように彼女の父の心配をするだろう。
なのに、自分は懲りもせずに宗一郎のことばかり気にしている。