クールな社長の不埒な娶とり宣言~夫婦の契りを交わしたい~

「実家に行くのか?」と上司の室井が聞いた。

 明日から紫織は夏季休暇だ。会社は休みではないが、八月中はそれぞれが交代で三日は休むことになっている。

「はい。お正月には帰ったから、しばらくは帰らないつもりだったんですけどねー」

「ふーん。何かあるのか? あ、もしかして、またお見合いの話? お袋さんも粘るなぁ」

「あはは。ほんとですよねぇ」
 以前から、母が縁談を持ってくることを室井は知っている。『花マル商事』にいたころにも、何度かそんな愚痴をこぼしていたのだ。

「え? 紫織さん、お見合いするんですかぁ?」
「あ、光琉ちゃん」

「はーい、紫織さん、お客さまから頂いたゼリーですぅ。女子の分しかないんですよぉ。冷たいうちに召し上がれ」

 よく冷えているのだろう。入れ物は濡れていて、フルーツが沢山入っているのが透けてみえていて美味しそうだ。
「わーい。ありがとう。じゃ、早速コーヒーいれて頂こうっと」

 ――お見合いの話、光琉ちゃんに誤解されちゃったかな?
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