クールな社長の不埒な娶とり宣言~夫婦の契りを交わしたい~
「社長は? お休み取らないんですか?」
「ん? ああ、そうだね。取りたいけど、なかなか」
「社長ですもんね」
これ以上何を話していいのかわからず、じゃあと頭をさげた。
ここに長くいるつもりはない。
退職届は提出したままだ。
このまま彼といい関係でいられるかもしれないけれど、いずれは彼が誰かと結婚する時がくるだろう。
いまはもしかしたら彼に恋人もいないかもしれない。でもいつか、その日はやってくるのだ。
もしかしたらそれは今日かもしれない。今日じゃなくても来月かも?
さすがにそれを笑って受け止める余裕はない。
だから、職探しは続けるつもりだ。早く次を探して、決まったらここを退職する。
こうして感じよく仲直りができただけで、もう満足。
そう思いながら、紫織は踵を返した。
「待って紫織!」
――えぇ?