クールな社長の不埒な娶とり宣言~夫婦の契りを交わしたい~
「お見合いもしないし、誰とも付き合ったりしないみたいだから、もしかしてと思って」
宗一郎のことかと、ふと気づく。
「あはは、何を言っているのよ。もう昔のことじゃない」
でも実は、いまの職場の社長なのと言おうとした。しかもまたプロポーズをしてくれたのよと。
それを聞いたら母はどんな顔をするだろう。喜んでくれるだろうか? 今言うべきかどうかと迷っていると、母は思いつめたように小さくため息をつく。
「そう。ならいいんだけど。実はね」と切り出したその表情は暗い。
――認めるわけにはいかないの。
私は“私だけの秘密”を、墓場まで持っていかなければならなかったから。
あの日あの子の髪の毛からDNA鑑定をしたの。藤村の子だったわ。
ごめんなさい紫織……。
「ん? どうかした?」
「あの時、無理にでも別れさせなきゃいけない理由があったのよ。鏡原宗一郎って言ったわよね? 彼」
「お母さんすごい。よく名前まで覚えているわね? そうよ。鏡原宗一郎」
「彼は、あなたの血を分けた兄妹なの」