クールな社長の不埒な娶とり宣言~夫婦の契りを交わしたい~

 別れさせるためなら、そんな酷い嘘までつくのかと、最初は思った。

『信じられないなら、お母さまに聞いてご覧なさい。あなたが二十歳になるまでの約束で、藤村から毎月養育費が振込まれているわ。認知することだけは認めるわけにはいかなかったけれどね。恥ずかしい話だけれど藤乃屋はいま、瀕死の状態なの。だからといってこれまでの養育費を返せとは言わないわ。それは義務だから気にしないでちょうだい。
 でもこれでわかったでしょう? 紫織のことは忘れて。紫織は知らないの、母親の違う兄妹がいるなんてね。それがまさか……。こんなことを知ったらあの子がどんなに傷つくか』

 もっと早く知っていればと、辛そうに額に手を当てた夫人を、奇妙なものでも見るように呆然と見つめていた。

 そんな奇想天外な話を信じろと言われても、理解することなんてできなかった。

『私には絶対にあの子には言えない……。お願いよ、二度とあの子の前に現れないと約束してちょうだい』

『本当、なんですか? いまの話は――』

『本当よ』

 無意識のうちにテーブルに肘をつき頭を抱え込んだ。
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