クールな社長の不埒な娶とり宣言~夫婦の契りを交わしたい~
――私は仕返しをされたの? あなたに。
美咲は笑い出しそうになった。
その様子をちらりと見た雪野は、コーヒーカップに手を伸ばし、七年前を思い出していた。
鏡原宗一郎が会いに来た時、髪の毛を拾った。
紫織と兄妹だと告げられて、ショックのあまり頭を抱えた時にハラリと落ちた髪だ。
それを元にして藤村宗一のDNA鑑定をした。
だから、あの子は藤村の子に違いないのに。
美咲はどうして宗一郎は石塚の子だと嘘をついたのだろう?
「私はこれでよかったと思っているわ」
外の空を見つめながら、美咲がそう言った。
「ええ、私もよ。あの子たちが幸せならそれで」
誰にでも秘密がある。
墓場まで持って行かなければならない秘密が。
ー 終 ー