クールな社長の不埒な娶とり宣言~夫婦の契りを交わしたい~
「倒産!?」
スプーンを持つ手を止めて、美由紀は零れそうなほど大きく目を見開いた。
「倒産じゃなくて廃業よ。誰にも迷惑をかけないで済むらしいんだ」
「……そうなの」
紫織と美由紀が一緒に暮らし始めたのは五年前。
美由紀がそれまで住んでいた部屋の更新時期と紫織が都内に戻ることになった時期が重なって、一緒に部屋を借りることになった。
ふたりは大学の同級生で、その頃からずっと変わらない無二の親友だ。
「社長の話だとね、少しずつ計画していたみたい。引退した後は空気のいい田舎で、奥さまと第二の人生をのんびりと過ごすことにしたらしいの。病気をしたことでね、踏ん切りがついたって」
「そうか、じゃあ辛いだけじゃなくて、明るい別れだね」