クールな社長の不埒な娶とり宣言~夫婦の契りを交わしたい~

「なに難しい顔をしているんだよ。イケメンの青年実業家には興味ないのか?」

「え? あはは、そんな立派な方とじゃ、考えようもないじゃないですかぁ」

「欲がないなぁ。紫織はいったいどんな男がいいんだ? あれもだめこれもだめ、なんだかんだ言って、実は理想が高いんだろ? エベレストみたいに」

「そんなことはないですよぉ。いいんです。私は結婚よりも、まずは自立したいんです」

 室井は呆れたように眉をひそめた。
「寂しがり屋のくせに、なに言ってんだか」

 向きを変えた室井は、「さて、行くか」と、ルーズに開いていた襟のボタンを留めてネクタイをキュッと整える。
「はい!」

 哀愁に浸る時間はもう終わり。
 いざ出陣だ。

 お疲れさまでしたとビルに挨拶をして、クルリと向きを変えた二人が向かうのは、彼らの引き受け先『株式会社SSg』。

「課長、『SSg』ってIT関係なんですよね? 私、行ってすぐにクビになっちゃったらどうしよう」

 自慢じゃないが紫織は大のパソコン恐怖症だった。
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