クールな社長の不埒な娶とり宣言~夫婦の契りを交わしたい~
 元が文系ということもあるが、パソコン、電化製品、機械。どれもこれも、どうしても苦手なのである。

 ルーティンワークなら機械的に覚えることができるが、応用はきかない。
 文書の中に表を作ることはできたとしても、その表の形を修正するとなると、もうどうしたいいかわからない、といった具合なのだ。

 そんな自分がIT企業に就職してやっていけるのだろうか。
 ――普通に考えたら無理よね。やっぱり。
 末恐ろしいとはこのことで、正直言って紫織は憂鬱で仕方がなかった。

 萎れる紫織を振り返った室井は、クスッと笑う。
「安心しろ。新しいところにお前が慣れるまでは、俺がしっかり見届けてやるから」

「本当ですね? 絶対ですよ」

 クスクスと笑いながら、チラリと見上げた室井課長の横顔は、いつもよりも数段、頼もしく見えた。

 そんな上司を見て、紫織はふと思う。
 ――課長はいつまで独身でいるつもりなんだろう?

 室井は以前、飲み会でポツリと漏らしたことがある。
『いい女だったんだ、俺の奥さんは……』
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