クールな社長の不埒な娶とり宣言~夫婦の契りを交わしたい~
 ジーンズを履いている人や、ラフな服装をしている人が多いせいかもしれないが、皆が二十代のように見える。

 これから面接するここ『SSg』の社長が青年というからには社員が若いのも当然かもしれない。

 やはり、場違いなところに来てしまったのではないか。
 紫織もいまはまだせめてギリギリ二十代ではあるが、せめてあと数年若ければと、動揺のあまり自分でも訳のわからないことを紫織は考えた。

 知らず知らずのうちに、深いため息が出た。

「――ハァ」

「さっきから溜め息ばっかだなぁ。大丈夫だって、俺だっているんだから」
 紫織の不安を見透かすように、室井が歯を見せて、にっかりと笑う。

「課長、お願いです。私より先には絶対辞めないでくださいね! どんな仕事でも私、がんばりますからっ」

「どんな仕事でもって? もしかして紫織。ここのこと調べていないのか?」

「はい。だって、どんなところでも頑張るしかないし。調べたら絶対自信喪失しちゃうから」

 そりゃそうだけどと、室井は呆れたように首を振る。

 ――課長は知らないからそんなことを言うのよ。
 だって。IT企業で検索したりしたら、間違って“彼”がいまどうしているか、わかっちゃうかもしれないんですよ?
 紫織は心の中で、そう言い訳をした。
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