クールな社長の不埒な娶とり宣言~夫婦の契りを交わしたい~
 いよいよ社長のお出ましか。

 落としていた視線をゆっくりと上にあげると、紫織はハッとしたように目を見開いた。

 ――えっ?!

「社長の鏡原宗一郎(かがみはら そういちろう)です」

 彼は紫織の、七年前に別れた恋人だった。
 元恋人は、薄い微笑を浮かべて名刺を差し出す。

「どうぞよろしく」

 ゴクリと息を飲む。
 彼の態度はまるで、初めて会う人のそれである。

 もしや他人の空似なのか。
 そう思いつつ、唇を震わせながら視線を落とした紫織は、ジッと名刺を見つめ、それからまた目の前にいる社長を見た。

 名前も顔も彼だ。
 雰囲気は少し違う。
 少し痩せたのか? 精悍な感じがするが髪型のせいもあるかもしれない。それはそれとして、見れば見るほど、どうみても紫織がよく知る宗一郎だ。

 大きな違いがあるとすれば、学生時代の彼は眼鏡をかけていたことくらいかもしれない。
 あまりのショックに茫然自失して声も出せずにいると。

「藤村、履歴書」
 室井に、そう声をかけられた。
「あっ、はい」
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