クールな社長の不埒な娶とり宣言~夫婦の契りを交わしたい~
「はい。わかりました」

「では、よろしく」

「よろしくお願いします」

 荻野副社長は、ニッコリと微笑んでその場を離れると、そのまま近くにいた社員に声をかけ親しげに話をはじめた。

 室井も席に座り、それを見届けるようにして紫織はへなへなと、自分に宛がわれた席に腰を落とした。

 ――宗一郎が? 社長?
 衝撃が強すぎて、なにも頭に入ってこない。
 なにもかもが真新しい自分の席に、感動する余裕もない。

「紫織、緊張しすぎだろ」
 室井が呆れたように首を振る。

「え! あ、あはは。すみません……」

「まぁ、でもよかっただろう? 営業の俺の補佐ってことだから今までとそう変わらないさ」

「えぇ、そうですね。よかったです」

 とりあえずの笑顔で答えた紫織は、動揺したままパソコンの電源を入れたり文具を確認したり、形ばかり手を動かしているうちに、ふと思い出して、ファイルから雇用契約書を取り出して広げてみた。

 代表取締役社長『鏡原宗一郎』

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