クールな社長の不埒な娶とり宣言~夫婦の契りを交わしたい~

 ――淡い初恋だった。

 もう二度と恋なんかできなくなるほど、心から好きだった。

 優しい恋人は、こんな酷いことを言う人じゃなかった。

 変わったのはあなたじゃないの?

 百年の恋も冷めるというのは、こういうことを言うのだろう。
 紫織の心の奥で誰にも知られずに燃えていたはずの密やかな炎は、冷や水を滝のように浴びせかけられたように、跡形もなく消えた。

『私がここに居てはいけませんか?
   藤村』

『まじでいるつもり?
 落ちぶれたもんだな   鏡原』

 バシッ!
 思わずノートパソコンを叩いていた。

「どうした紫織?」
 音に驚いたのだろう。
 隣のパーテーションから室井課長が顔を出す。

「あ、あはは。いえいえ、虫です。なんか虫がいて、あはは」
「そっか」
 課長が顔を隠したところで紫織は返事を書いた。

『私はや・め・ま・せ・ん  藤村』

 ――そうですとも。絶対に、絶対に辞めるもんですか。

 これは女の意地だ。
 そんな簡単に負けてはいられない。
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