クールな社長の不埒な娶とり宣言~夫婦の契りを交わしたい~
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「宗一郎っ? え?『SSg』って宗一郎の会社だったの?」
紫織の報告を聞いて、美由紀も絶句した。
「そう。もう最悪。あいつがパソコンに送ってきたメッセージに何て書いてあったと思う? 落ちぶれたもんだな、だって」
「そんなこと言ったの? 宗一郎が?」
「そうよ。酷すぎるでしょ」
口にした途端、消えたはずの怒りがまた込み上げてきた紫織は、冷蔵庫から取り出した発泡酒を手に取りゴクゴクと一気に飲んだ。
「くたばれっ! アホ」
それから立て続けに飲んで三本目の缶が並んだ頃には、お酒に弱い紫織が酔いつぶれるのには十分だった。
「宗一郎のバカヤロー」
遠吠えのようにそう叫んで、紫織はパタッとテーブルに突っ伏した。
そんな紫織を見て、美由紀はため息をつく。
――やれやれ。
美由紀と紫織は大学の同級生で、そこでふたりは友達になった。
紫織は綺麗だった。
紙の先から爪の先まで本当に綺麗で、いい匂いがして。紫織を通してブランド物という存在を、その時はじめて意識した。
東北の片田舎から、誰も知り合いのいない都会に来た美由紀の目に彼女はキラキラと、本当に輝いているように見えたのである。