クールな社長の不埒な娶とり宣言~夫婦の契りを交わしたい~

***


「宗一郎っ? え?『SSg』って宗一郎の会社だったの?」
 紫織の報告を聞いて、美由紀も絶句した。

「そう。もう最悪。あいつがパソコンに送ってきたメッセージに何て書いてあったと思う? 落ちぶれたもんだな、だって」

「そんなこと言ったの? 宗一郎が?」
「そうよ。酷すぎるでしょ」

 口にした途端、消えたはずの怒りがまた込み上げてきた紫織は、冷蔵庫から取り出した発泡酒を手に取りゴクゴクと一気に飲んだ。
「くたばれっ! アホ」

 それから立て続けに飲んで三本目の缶が並んだ頃には、お酒に弱い紫織が酔いつぶれるのには十分だった。

「宗一郎のバカヤロー」
 遠吠えのようにそう叫んで、紫織はパタッとテーブルに突っ伏した。

 そんな紫織を見て、美由紀はため息をつく。
 ――やれやれ。
 美由紀と紫織は大学の同級生で、そこでふたりは友達になった。

 紫織は綺麗だった。
 紙の先から爪の先まで本当に綺麗で、いい匂いがして。紫織を通してブランド物という存在を、その時はじめて意識した。
 東北の片田舎から、誰も知り合いのいない都会に来た美由紀の目に彼女はキラキラと、本当に輝いているように見えたのである。
< 56 / 248 >

この作品をシェア

pagetop