クールな社長の不埒な娶とり宣言~夫婦の契りを交わしたい~
引っ込み思案で、ちゃらついた男子学生を苦手としていた紫織も、無口だけれども誠実な彼に心を開くのは難しいことじゃなかっただろう。
おとなしい紫織と無口な宗一郎。
ふたりは瞬く間に恋に落ちた。
宗一郎が就職先を決めて間もなく、紫織にプロポーズをした。
泣いて喜ぶ紫織にもらい泣きをしたのは、いまから七年前。あの時、美由紀は気づかなかった。
『ねぇ美由紀。この前ね、友達に聞かれたの。好きな人にフラれる時、どんな風にフラれたら、彼のことが忘れられるのかなって』
紫織にそう聞かれて、その時何も知らなかった美由紀は、少し悩んでから答えた。
『うーん。できるだけ冷たくフラれる方がいいな。中途半端に優しくされたら忘れられないもん。いっそ思いっきり酷いことを言われたほうがいい。『お前みたいな田舎者相手にするわけねーだろ』とかね』
宗一郎と別れたと、泣きはらした目をして紫織が打ち明けてきたのは、それから数日後のことだった。
『私、お見合いをするの』
少しずつ見えてきた状況は、慰めようもないほど厳しかったのである。