クールな社長の不埒な娶とり宣言~夫婦の契りを交わしたい~
いつの間にか恋の話になっていたらしい。
「え? ああ、あはは、今はいないです」
「ですってよ」
光琉はそう言って副社長を肘で突いた。
今はって何よ。
宗一郎と別れて以来、ずっといないじゃないのと自分に突っ込んだ。
でも回り回って彼の耳に入るのは悔しい。
しまった。嘘でもいいから『います』と言えばよかったぁ。
そう後悔したが遅かった。
「紫織はね、モテるんですよ。でもなかなか好みがうるさくってねぇ」
――課長! ナイスホロー!
「あはは、別にモテませんけど、そうなんですよ。私、うるさいんです。妥協するくらいなら一生独身でいいかなぁって」
言いながら、これで良し! と、胸を撫でおろす。
――そういうことにしよう。
私は理想が高い。ちょっとやそっとの男性では満足できない。妥協するくらいなら、独身を通すほうがいい。
ある意味間違ってはいない。
誰も好きになれなかったということは、結果的にそういうことなのだから。
「いいですねぇー紫織さぁん、私そういうの賛成でーす」
そう言って、光琉が紫織のグラスに自分のグラスをチーンと当てた。