クールな社長の不埒な娶とり宣言~夫婦の契りを交わしたい~

 その夜。宗一郎は、彼にしては随分早く会社を出た。

 向かった先は、昼に約束したホテル。
 スイートルームの予約は既に電話で済ませている。

 ロビーで待っていると彼女が現れた。

 入口から入ってくる彼女をまじまじと見ながら、うんうん、やっぱり綺麗な子じゃないかと思った。

 その証拠に彼女は周りの男の目を集めている。

 上品で楚々としたワンピースに、何が入っているのか不思議なほど小さなバッグ。細い足首に、いまにも折れそうな高いピンヒール。
 パパに買ってもらっただろうブランド品の数々は、どれもこれも彼女に似合っている。

 延々とひとりでしゃべり続ける癖は面倒だとは思うが、生意気なことを言うわけでもないし、邪魔をするわけでもなく、聞き流せないこともない。
 胸だって大きいし、腰は細いし、肌はピチピチだ。

 ――悪くない。

 なにも急いで別れることはない。まだ慣れていないからだ。

「ごめんなさいね。待った?」
「いや」

 自分が男を待たせたということに満足しているのだろう。
 うっとりと微笑んで宗一郎を見上げた彼女は、彼の腕に指をかける。

 ――大丈夫さ。

 食事をしてまた絡み合えば、今夜こそ、今までとは違う気持ちになれると思った。

 ――そうだ。今夜こそ。


 なのに……。
< 70 / 248 >

この作品をシェア

pagetop