クールな社長の不埒な娶とり宣言~夫婦の契りを交わしたい~
たいしたことじゃない。
接点など皆無に等しいし、実際話をする機会もない。
目にするから気になるだけで、なるべく営業部に行かなければいいのだ。
見ざる言わざる聞かざる。
今後はなるべく自分から行かないようにして、来てもらうようにすればいい。
――気のせいさ。今までとなにも変わらないじゃないか。
そう思いながら、大きく息を吸って心を落ち着けた。
やることは沢山ある。
寝てしまった分を取り戻さなければならない。
席に戻ってパソコンを開いた時にはすでに、彼は自分を取り戻していた。
集中力の高さは、彼の特技の一つだ。
仕事がある限り、どんなことでも乗り越えられる。彼はそう信じている。
そして午後、無事に会議が終わり客の乗った車を見送った時だった。
「宗一郎さん」
――え?
昨夜会った彼女が、日傘をさして立っていた。
「電話をしたのに」
「あぁ、そう」
「もう会わないって、どういうこと?」