クールな社長の不埒な娶とり宣言~夫婦の契りを交わしたい~
ブレーキをかけて赤信号で止まると、
大学生くらいのカップルが転げるように笑い合い、じゃれ合いながら目の前を過ぎていった。
宗一郎は、来月三十歳になる。
自分にもこのカップルのような学生時代があったはずだと思った。
あんな風に笑い、あんな風にふざけ合って。
でもそれは、とてつもなく遠い昔で、何か記憶違いをしているのだろうか。もしかしたらあれは単なる夢、心に描いた幻想だったのか。
そんなことを思ううち、ふいに、もう一度彼女に会おうと思った。
会って直接言おう。
もう二度と会うことはないし、これ以上君と付き合うつもりはないと。
それであの子に殴られるとしても、せめて。
そうすることが人としての礼儀だ。そう思った。