クールな社長の不埒な娶とり宣言~夫婦の契りを交わしたい~
帯も、帯を締めている帯留めもなにもかも。見れば見るほど心が惹かれ素直に感動した。
光琉が着ているドレスは今夜のために新調したものだ。
社長秘書という立場を考えて奮発したそれなりのブランド品である。とはいえ一万円札に百をかけるほどじゃない。
でも、紫織が着ている着物はその程度の物じゃない。
――五百万で買えるだろうか。いや、帯や帯留めまでいれたら一千万でも買えないかもしれない。
キャバクラで働いていた時、光琉は銀座のクラブのママと知り合いになった。
ママの人柄も雰囲気も全てがとても素敵な女性だったので、一時は真剣にそのクラブで働きたいと考えたこともある。
彼女はいつも素敵な着物を着て、着物のよさを教えてくれた。
光琉が夜の街から抜けることを決めたのも、『あなたは昼間のほうが似合うわ』と言ってくれたママの言葉に寄ると言ってもいい。
「いまは買えないけど、いつか素敵な着物を一式揃えたいと思っているんです」
「そう言ってくれるとなんかうれしいわ。私ね、実家が昔、呉服屋をやっていてね。これはその名残りなの」