クールな社長の不埒な娶とり宣言~夫婦の契りを交わしたい~
 ――すごいね、宗一郎。

 短期間でここまでの会社に成長させるのには、どれほどの苦労があっただろう。
 もちろん紫織には想像すらできないが、並大抵のことではなかったに違いない。

 彼はいまステージの、向かって左側の袖にいる。
 ジッと見ているとふと目が合った気がして慌ててステージに目をそむけた。

 でもそれは、きっと気のせいだ。

 こちらからは彼がよく見えるが、彼から見れば薄暗い会場の人混みに紛れている姿など見分けられるはずがない。

 それはいまの、世界が違うふたりの距離。そのものだと思った。

「遠いなぁ」
 紫織は小さく呟いた。

 ――遠いね、宗一郎……。



 そして。

 ――紫織。
 宗一郎は紫織を見つめていた。
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