クールな社長の不埒な娶とり宣言~夫婦の契りを交わしたい~
彼女はステージのスクリーンをジッと見つめている。
ついさっき、ふと目が合ったような気がしたが、それは多分気のせいだろうと思った。
――紫織は俺のことなんて見たくもないだろう。
さぞかし軽蔑しているに違いない。
七年後に会った元恋人は、職場にまで女に押しかけられて、わざわざ人前で平手打ちをされるような、そんな酷い男に成り下がっていたのだ。軽蔑しないわけがない。
栞里がわざわざ会社に来た理由は、ただの腹いせだ。
たった一言で自分を捨てようとする男を、そう簡単に許せなかったのだろう。
未練などこれっぽっちもないのに涙を流し、周りの人間に同情を誘った。
あの時、光琉に促されてタクシーに乗った彼女は、宗一郎だけに見えるように、ペロリと舌を出した。
中指を立てて彼を睨み、ツンと澄ましてタクシーと一緒に消えたのである。
だからといって、責める気持ちはない。
もう少し彼女に興味を持っていれば、彼女の本来の姿や素性はすぐに気づいただろう。
騙されていたというよりは、それだけ彼女自身に興味がなかったということだ。