クールな社長の不埒な娶とり宣言~夫婦の契りを交わしたい~
 栞里との出会いはパーティだった。
 ホームページの作成に携わったショップのオープニングパーティーだったと思う。

 そこで彼女を見かけた時、微かに心が動いた。

 ――紫織、何故だかわかるか?
 ほんの少しだけ似ていたんだよ、お前に。

 長くて細い髪の質とか、微笑んだ時の口元が。似ていると思ったんだ。

 しかも名前が『しおり』
 それだけで、その偶然にすがろうとした。

 馬鹿だよなぁ。
 あの女を抱きながら、乱れた髪や喘ぐ口元に、俺はお前の面影を探したんだ。そして。

『――紫織、紫織』
 お前の名前を呼びながら、全然似ていないことに気づくんだ。
 なにひとつ似ていないことに絶望して、打ちひしがれた。

 何を血迷っていたんだろうな、俺は。
 馬鹿としか言いようがない。

「はぁ」
 魂が体から抜けていくような深いため息をついた時。
「宗一郎」と呼ぶ声がして、振り返ると荻野がいた。

「反応、良かったな」
 一瞬なんの話かわからなかった。
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