クールな社長の不埒な娶とり宣言~夫婦の契りを交わしたい~
「やっぱり彼の曲はいいな、どこか哀愁があって」
それがいま終わったプレゼンの話だとわかるまでに、ほんの数秒だが時間がかかった。
それだけ思いにふけっていたのだろう。
「ああ、そうだな」
会場は明るくなり、ざわざわと賑わい始める。
「鏡原社長」
「ああ、モリ社長、今日はありがとうございます」
仕事の話の合間に、モリが「美人が多いですねぇ『SSg』は。鏡原社長の好みですか?」と笑った。
「特にあの着物美人、彼女はゲストですか?」
彼の視線の先を見れば、予想通り紫織がいた。
「ああ、彼女はうちの社員です」
「楚々として、本当に綺麗だ。うん、実にいい」
「あ、あはは。まあそうですね。つい最近転職してきた女性なんですが、婚約者がいるそうで」
――え? なにを言ってるんだ、俺は。
「そうですか。それは残念だ」