クールな社長の不埒な娶とり宣言~夫婦の契りを交わしたい~
 それから数人の客となんだかんだと雑談をして、ホッとひと息ついた。

 ――紫織のやつ。目立ち過ぎだ!
 なんだってそんなにめかしこんできたんだ。
 ノーメイクでいいんだ、ノーメイクで!
 着物なんか着てんじゃねぇよ、スーツでいいんだスーツで!

 イライラしなが一体どこにいるのかと紫織を探して見つけた時、彼女は来賓の男と話をしているようだった。
 よく見るとなんとなく紫織が嫌がっているように見える。

 ――え?

 もしかして絡まれているのだろうか?
 男の顔は赤く酔っているようだ。
 あれは確か広告代理店の役員。ニヤついた顔を隠そうともせず舐めるように紫織を見ている。紫織は顔をそむけるようにして薄く笑みを浮かべてはいるがその表情は硬く、じりじりと後ろに下がっていく。

 ――おい、おいおい!

 気になって凝視していると、ふいに紫織と目が合った。

 ――あ。まずい。
 慌てて眼を逸らした。

 早くなんとかしなければと、ウェイターを捕まえて、あの客を止めるように言いながら振り返った時、赤ら顔の男はまだいたが、そこにはもう紫織はいなかった。

「あれ?」

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