クールな社長の不埒な娶とり宣言~夫婦の契りを交わしたい~
宗一郎が、キョロキョロと紫織を探していたその頃。
当の紫織は、パウダールームのスツールに腰を下ろし、自分に言い聞かせていた。
――がんばれ紫織、そんなに怒ったら眉間にシワができちゃうよ。我慢我慢、あんな男ほっときなさい。
指先を口角にあてて、キュッと笑顔を作ってみた。
その調子その調子。形だけでもこうして笑顔を作ると脳が誤解をして本当に楽しくなってくると聞いたことがある。
指を離してそのままに、鏡の中の自分に笑顔を送った。
――私は強くなったんだ。引っ込み思案で気が弱かった、昔の私じゃない。
「あなたの助けなんて必要ないわ」
酔った男に絡まれた。
料理を取ろうとすると手を伸ばしたその横からヌッと顔を出した赤ら顔の男性は「君、これおかわり」と、声を掛けてきた。
「――え?」
と、振り返れば、男性は紫織の全身を見渡すように上下に首を動かしながらまじまじと見ている。
「なんだよ。コンパニオンだろ?」
「い、いえ、私は」