眠れない夜は、きみの声が聴きたくて
……はあ、なんかもう疲れてる。
桜並木が一望できる歩道橋で足を止めて深呼吸した。
ねえ、旭。
十四歳の時からなにか変わったかと聞かれたら数えきれないほどあるけれど、変わっていないことがひとつだけあって、私は相変わらず生き方が下手くそだよ。
でもあの頃は大勢で寄せ集まっているよりも、ひとりでいるほうが楽だった。
誰かに合わせることもなく、言いたいこともはっきりと言葉にできた。
きっと私は強かった。
強さがあったはずだった。
でも今の私は自分のことがわからなくなるほどに弱くなっている。
旭は……十四歳の頃からなにか変わった?
それとも今もあの明るさで誰かを照らしていたりする?
また桜の花びらが風に乗って運ばれてきた。
手を伸ばしてみたけれど触ることができずに、私の手が届かない場所へと飛んでいってしまった。