眠れない夜は、きみの声が聴きたくて
そうこうしてるうちに時間は過ぎて、あっという間に部活動の終わりを告げるチャイムが鳴っていた。
もう少し話したかったのにと名残惜しく思っていると、部室の窓から眩しいほどの夕日が差し込んできた。
「うわ、すげえ……!」
あまりに綺麗すぎて、自然とスマホを空へと向けていた。
「市川も撮ってみて」
「私はいい」
「ほら、早く! こんな夕日次はいつ見れるかわかんねーじゃん?」
市川はしぶしぶといった様子で、スマホをカバンから取り出した。そして……。
「夕日の写真なんて初めて撮った」
シャッターを押したあと、彼女の口角が少しだけ上がったような気がした。
なんで市川といるとこんなに楽しい気持ちになるんだろう。時間が足りない。もっともっと同じ空間にいたい。
「じゃあ、これから俺と綺麗なものを探して撮ってみない?」
「え?」
「あ、えっと、写真部の一環っていうか、そういう部活にしていったらどうかなって」
明日も一緒にいたいから思い付いたことなんて、言えるはずがなかった。
どうにかして繋ぎとめたかった。
そのぐらい、この短時間で心を奪われていたんだ。