眠れない夜は、きみの声が聴きたくて
「旭が嫌じゃないならいつでも行くよ?」
「嫌なんていつ言ったんだよ」
「じゃあ、毎日行っていいの?」
「毎日は嫌」
「ほらー!」
早坂の甲高い声が田んぼに鳴り渡る。
そんな俺たちの前方では黄色信号がチカチカと点滅していた。日中は普通に稼働してる信号機も二十二時を過ぎるとこの町ではこんなふうになる。ちなみに進めでも止まれでもない自己判断の信号機になっても、事故は一度も起きたことがないようだ。
「あ、ごめん。ママからだ」
早坂がスマホに耳を当てる。そのタイミングで、俺もスマホを出して早坂から距離を取った。画面に表示された【市川響】の文字を見つめる。
また連絡してもいい?と聞いた返事はもらえなかった。
声さえ聞けたら一回だけでいい。元気だとわかればそれだけでいい。そう思ってかけたくせに、俺はまた発信ボタンを押そうとしてる。