眠れない夜は、きみの声が聴きたくて
「響は住んでるとこ変わってない?」
『変わってない』
「高校はどこに進んだ?」
『成南』
「志望してたところ受かったんだ」
『うん』
中学二年の頃、高校のことについても少しだけ話をしていた。
「電車通学で成南に行ってネクタイ結びたいって言ってたもんな」
『……私が入った年からネクタイじゃなくて、リボンに変わったの』
「え、マジ?」
「そっか、残念だな」と続けると、彼女は『面倒くさくてしてないことのほうが多いからべつに残念でもないよ』と言った。
そういえば中学の時も、ひとりだけセーラー服のスカーフを面倒くさがってしてなかったっけ。
注意されてもツンとしてて。だけど全校集会や行事などやむを得ない場合はしぶしぶ付ける。
あの頃、女子のスカーフなんて見慣れていたのに、響が珍しく付けていると妙に目を奪われていた。
今の響はどんな姿をしてるんだろう。
想像しても頭に浮かんでくるのはショートカットで、まだ幼さが残っている十四歳の彼女だ。