眠れない夜は、きみの声が聴きたくて
「あ、悪い」
スマホの光りが眩しいので、すぐに画面を暗くしてポケットにしまう。
「電話、誰?」
「同じ中学だった子」
「女の子?」
「うん、そう」
「なに話してたの?」
「色々」
「色々とかやらしい!」
勝手になにを想像してるのか、早坂が怒り出した。「詳しい内容を教えなさいよ!」と、上から目線で言ってくる声を無視して、再び夜道を歩き出す。
なあ、響。
もしかしたらこの二年間で俺は変わったことのほうが多いかもしれない。
この町は本当に長閑で、争いごともないから優劣もない。
みんな手を繋いで一等賞の、助け合いの精神が根強くあって居心地もいい。
でも、たまにお前の言葉を思い出すよ。
『いい人って、疲れない?』
べつに自分の中に悪があるわけじゃない。
無理もしてないし、演じてもない。
けれど、みんなと違うことが俺にはあって、それを隠してるってことは、本当の自分を見せていない気がしてる。
響はどう?
ちゃんと誰かに本当の自分を見せられてる?