眠れない夜は、きみの声が聴きたくて
学校までは電車で七駅。いつか電車通学をしてみたいなんて安易に思っていたけれど、実際は混んでいるし、ストレスも溜まるし、そんなにいいものじゃない。
高校生になったら当然のように世界も広がっていくものだと思っていたけれど……なんだか日に日に息苦しさが増してくる。
「響、おはよう!」
教室に入ると、すぐに友達が声をかけてくれた。
「うん、おはよう」
「あれ、今日メイクしてない?」
「いつも日焼け止めだけでメイクはしないよ」
「うそっ!? じゃあノーメイクでその完成度なの?」
友達はよほど驚いたようで、「ねえ、みんな知ってた?」と、他の人にも大声で知らせている。ぞろぞろと顔を覗き込まれ、最終的にはここのアイシャドウは発色がいいとか、保湿性があるリップはあそこのがいいとか、いつものように弾丸トークが始まってしまった。
私は話に付いていけないので、差し支えがないように頷くだけ。そんな様子をクラスメイトの女の子が遠巻きに見ていた。
それは表側だけ笑顔で取り繕っても、心では違うことを考えてるんでしょっていう冷めた視線だ。
……わかるよ、その気持ち。私だって友達も協調性もいらないと思っていた。
でも友達は必要だし、協調性も大切だし、ひとりでは成り立たない世界があることを今の私は知っている。
だからこうして頑張って、せっかくできた友達を失わないようにしてるのだ。
けれど、頑張ってるって言ってる時点で間違っているのか。
私はこの輪の中にちゃんと溶け込めているのか。
なんにもわからないから、浮かないようにただ必死になって踏ん張ることしかできない。