眠れない夜は、きみの声が聴きたくて
*
誘われるがまま入部した写真部。適当に最初だけ参加して、しばらく経ったら他の人たちと同じように幽霊部員になるつもりだったのに……。
なぜか今日も私は放課後に三浦と一緒にいた。
「とりあえず草とりしようぜ!」
「は? なんで?」
「だって土を作んないと種撒いても育たないだろ」
「……面倒くさ」
私は荒れ放題の花壇にため息をつく。
『今日はいいものがある』なんて言うから中庭まで付いてきたものの、三浦が意気揚々と見せてきたのはポチ袋に入った小さな種だった。どうやら国語の先生からもらったらしい。
この学校に園芸部がないため、先生たちが交代で敷地内にある草花を手入れしてることは知っていた。
おそらくなにかの手伝いをしたお礼に種をもらったんだろうと予想する。
「……なんの種?」
「品種はわかんないけどなんかの花だと思う」
「そりゃ、そうでしょ。野菜が生えてきたらびっくりするよ」
「野菜かあ……いいな、それ!」
ヤバい、余計なことを言うんじゃなかった。
三浦は宣言どおり綺麗なものをスマホで撮るということを続けていた。
綺麗なものと言っても縛りがあるわけではなく、その時に見つけたものや、その瞬間に目に入ったものを撮るだけでもいいらしい。しかも今回は花を一から育てて写真を撮ろうとしている。
こんな活動になんの意味があるんだろう。
本当に草取りを始めた三浦を横目に、私はまだ前向きになれていない。