眠れない夜は、きみの声が聴きたくて


思えば彼は教室でもそうだ。

これしよう、あれしようって突拍子もないことを言い出すのはいつも三浦で、みんながそれに付いていく。

私が参加しなかった親睦会も彼が中心になって盛り上げたそうで、クラスメイトたちに「早く次の計画を立ててよ」なんて、せがまれている姿をよく目にする。

「……三浦って、怖いよね」

気づくと、そんな言葉を投げていた。

「え、怖い?」

「うん、人に好かれすぎて」

天性なのか人柄なのか、特別なことをしなくてもおのずと人が寄ってくる。

旭先輩、旭、旭くんって、下級生も同級生も上級生もみんなが彼と話したくて順番待ちをしている。

それを遠目から見てる私は、人気者って大変だなと思う一方で、怖くも感じていた。

どんな人にも分け隔てなく接して、言葉選びもテンションも間違えない。私からすれば、細い糸さえ通らないくらいに、隙がないように見えてしまう。

「人から怖いなんて初めて言われた……」

さすがに怒るだろうか。怒ってくれたら普通の人なんだなって思えるのに三浦は……。

「ふ、ははは。市川ってやっぱ面白いな」

笑った。

いたずらっぽく顔をくしゃりとして。

私は基本的に人のことを斜めから見てしまうから、表面上だけの笑顔はすぐにわかる。でもこれは作ってる笑顔じゃない。どうやら私が言ったことが本当に可笑しかったようだ。

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