眠れない夜は、きみの声が聴きたくて
「俺は市川のこと、すごいって思う」
「……どこが?」
「自分の心に素直なところ」
……素直、なんて初めて言われた。
いつも偏屈とか意固地とか、自分の欠点ばかりを挙げられるほうが多いから。
「やっぱり三浦って怖い」
このままだと私まで彼の色に染まってしまいそうだ。
「あれ、面倒くさいんじゃなかったの?」
気づくと私はしゃがみこんで、草に手を伸ばしていた。
「気が変わっただけ。疲れたらすぐ止めるから」
そんなことを言っておきながら、結局花壇が綺麗になるまで草取りを手伝ってしまった。
ふう、と一息ついたところで、なにやらシャッター音が聞こえた。
「顔に土がついてる市川の写真」
「は、ちょっと、今すぐ消してよ!」
彼のスマホを奪おうとしたが、あっさりと交わされた。
「消すから連絡先教えて」
「なにそれ、脅してんの?」
「半分はそう。もう半分は俺が単純に知りたいだけ」
「……やだよ。私、メールとかしないし」
「してよ。これからは撮った写真も送り合おう?」
三浦の目はビー玉かなにかで作られているのかな。まん丸でキラキラしてて、拒む理由を無条件に打ち砕いてしまう。
「本当に消してよね」
私は彼と連絡を交換した。
最初に送られてきた写真は薄く広がっている空に浮かぶ飛行機雲だった。
迷いがないように一直線に伸びている白線が、まるで彼のようだと思った。