眠れない夜は、きみの声が聴きたくて
「……そっちは今なにしてる?」
『俺は部屋でテレビ見てる。多分、東京ではとっくに放送が終わってるドラマ』
「再放送?」
『ううん。だいたいそっちで放送された二カ月後にこっちではやるんだよ。ほら、よく放送は一部の地域を除くとか表示されてるだろ。俺の住んでるところその一部だから』
「そんなに田舎なの?」
『あんまりでかい声で言えねーけど、ど田舎だよ。電車は二両編成、本数は一時間に一本。夏はカブトムシが入ってきて、冬は暖を求めてたぬきが乗ってきたりする』
「嘘つかないで」
『いや、本当なんだって!』
さっきまで気持ちが沈んでいたのに、旭からの電話で私は少し元気になっていた。
「あはは、やだ。ちゃんと撮ってよ。もう一回!」
先ほどのカップルが夜景を背に写真を撮っている。
『なんか騒がしいな。友達?』
「ううん、違う」
『学校、楽しいか?』
今までテンポよく続いていた会話が途切れる。学校は……楽しいと思う。今日だって友達と遊んだし、端から見れば充実した生活だ。
――『俺は市川のこと、すごいって思う』
ふと、十四歳の頃に言われたことを思い出した。