眠れない夜は、きみの声が聴きたくて
「ほら、じっとしてて」
私は湯船を使いながら妹の体を洗う。アヒルのオモチャで気を引いているうちに髪の毛にもシャンプーを付けた。
「……うう、やだあ……っ」
髪を洗いはじめるとグズるのはいつものことだ。
「めめが痛い……っ!」
「動くからでしょ」
「ふえっ……」
ついには大泣きしてしまった未央を無視して洗い続ける。こういう小さなことでも自分の世界が壊れていく音は聞こえてくる。
「ど、どうしたの? 大丈夫?」
火がついたように泣きじゃくる未央を心配して、お母さんが様子を見にきた。
「うん。目にシャンプーが入ったみたい」
「もう、気をつけてあげてよ」
「………」
なんで私が悪いみたいに言われなきゃいけないんだろうか。本当は私だってゆっくりお風呂に入りたいし、家に帰ってきて妹の世話を手伝うことだってしたくないのに。
結局、未央は湯船には浸からずに、そのままお母さんが連れていった。私がお風呂から上がる頃には、リビングの隣にある寝室で未央のことを寝かしつけていた。
「カレーできてるから、自分でよそって食べてね」
「……うん」
ウトウトしている妹を起こさないように、私は音を立てずにダイニングテーブルの椅子に座る。カレーをスプーンを黙々と食べながらも、気を使ってテレビは付けなかった。
【響、全然返信ないけど忙しいのかな?】
スマホを確認すると、友達たちのやり取りはまだ続いていて、私の話題になっていた。
学校でも行動を共にしてる友達はみんないい人だし、人の悪口も言わない。
でも私はうまくやれているのか、わからない。仲良く……できている自信もない。
妹の世話をしていたなんて言えば明るい雰囲気を壊してしまうかもしれないので【寝てた】と、返事をした。みんなから一斉におはよう!という可愛らしいスタンプが届く。
……よかった。答えはこっちで合ってたみたい。