眠れない夜は、きみの声が聴きたくて

朋美おばさんに挨拶をしたあと、俺は外灯が少ない夜道を歩く。周りに生えている雑草が風に吹かれて揺れている。

今はキツネノボタンという黄色い花が咲き、夏になれば青い蝶のような形のツユクサが生え、秋にはススキ。冬にはパチパチと音が鳴るナズナが見られる。

ここに来て二年。自分はなにも進んでいないというのに、時間だけがやけに早く流れている。

……プルルル、プルルル。俺は暗がりの中でスマホを耳に当てた。

『はい』

辺りにいる虫よりも、小さな声で響は電話に出てくれた。

「さっき電話した?」

『ごめん。間違えてタップしちゃって……』

「なんだ、そっか」

『……私に電話して彼女が怒らない?』

その言葉に、「え?」と聞き返す。思い当たることと言えば昨日電話の途中で早坂が乱入してきたことくらいだ。

あの時、一方的に電話を切られてしまったし、早坂の声が響に聞こえてしまったことはわかっていた。

「彼女なんていないよ」

変に友達だと強調すると誤解されそうなので、シンプルに答えた。

『そう、なんだ』

なんとなく声に元気がないように感じるのは気のせいだろうか。

「なんかあった……?」

『え、ああ。妹にずっと絵本読んであげてて、さっきやっと寝たところだったの』

「妹って二年前に響のお母さんのお腹にいた子?」

『うん、そうだよ』

性別は聞いていなかったけれど、女の子だったんだ。

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