眠れない夜は、きみの声が聴きたくて
*
――十四歳の春。私が三浦旭と出会ったのは、今と同じ桜が舞う四月だった。
私は当時から人付き合いが苦手で、クラスメイトと馴染むことができず、どちらかと言うと煙たがられている存在だった。
「この前のはさすがにないよね」
女子生徒が先日の出来事を掘り返している。新学期が始まったばかりの教室で学級委員長を決める際に、山田くんと岡野さんが立候補をしていた。クラスの多数決を取ることになった時、私が山田くんに手を挙げたことがどうやらいけなかったらしい。
「市川さんのせいで岡野ちゃんじゃなくて山田になったし、マジで最悪だよね」
私のせいだったかはさておき、女子たちは打ち合わせでもしていたように全員岡野さんに手を挙げていた。結果として一票差で負けたというからには、私のせいでもあるのだろう。
……はあ、こういうの面倒くさい。
個人の気持ちは無視で、みんなで同じものを選ぼうねという同調圧力が昔から苦手だ。
とくに女子はトイレまでみんなで一緒に行く。さらにはテンションまでもがみんなと同じじゃないとダメらしい。意味がわからない。
「なあ、せっかくクラス替えしたんだし親睦会とかやらない?」
そんな中で、すでにクラスメイトをまとめている生徒がいた。
三浦旭は人気者という言葉がピッタリなほど友達が多い。去年は違うクラスだったけれど、よく目立つ人なので私でも知っている。
涼しげな目元と爽やかな短髪。顔は女の子みたいだけど、みんなから頼られるリーダー的な存在であり、彼の周りにはいつも人がいる。協調性が欠けている私にとって、親睦会なんて計画してる三浦は厄介だった。