眠れない夜は、きみの声が聴きたくて
「市川も来ない?」
彼は予想どおり、私のことを誘ってきた。みんなの前で声をかけてくるところも鼻につく。
浮いている私は目に入るのに、なんで女子たちの嫌そうな顔には気づかないのかな。あからさまに誘わなくていいのにって顔をしてるのに。こういう自分は誰とでも仲良くできますよ、みたいなアピールをするって好きじゃない。
私は露骨に嫌な顔をして席を立った。
自分の性格を一言で表すなら冷めている。というか、周りからそう言われることが多い。
私はきっと人の裏側を見ようとしてしまうのが癖なのだ。とくに女子は表で作っている顔と、裏で思っている顔は違う生き物だから、余計に色々と想像してしまう。
廊下を歩いていると、掲示板に貼られた部活一覧の紙が目に入った。
そういえば今年から部活は全生徒が入部しなくてはいけない決まりになった。どうやら学校帰りにそのまま遊びにいってしまう生徒が多いことを危惧しての決定だそうだ。
……どうしよう。部活とか全然やりたくない。なにか逃れる方法はないかと頭を悩ませていると、背後からバタバタと騒がしい足音が近づいてきた。
「……市川!」
名前を呼ばれて振り向くと、三浦がなぜか追ってきていた。
「なに?」
「やっぱり親睦会来いよ」
こんなことを言うためにわざわざ走ってきたんだろうか。
あんな大勢の友達を置いてきてまで?